あたらしいレーザーIQ577とその治療
網膜に対してレーザー照射(=光凝固)という治療は、長い間“破壊的な”治療でした。つまり、ある程度組織を凝固(破壊)して視力にとって大事な黄斑部を温存する治療でした。例えてみれば、一部の網膜を間引いて、残り大事な網膜だけをとっておくという理屈です。
近年は ◆短時間で高出力レーザー
◆閾値下レーザー
という新しい照射方法が開発され、より少ない組織破壊、あるいは組織破壊のないレーザー照射が行われます。
当院では新しいレーザー光凝固機器IQ577の導入によって、より組織破壊の少ない、難しかった黄斑へのレーザー治療、緑内障レーザー治療ができるようになりました。
@網膜への光凝固 = 連続波レーザー
網膜光凝固に適した波長特性
キサントフィルにほとんど吸収されない、577nm波長のきれいな黄色(ピュアイエロー)レーザーなので、黄斑部の凝固はより安全に行えます。
パターンスキャンによる短時間高出力凝固
このレーザー照射システムによって、従来の単発照射よりも少ないエネルギーで凝固できるため組織破壊が少ない、疼痛も軽くなるというメ リットがあります。また、このパターンスキャン機能を使って、従来と比較して短時間のうちに汎網膜光凝固ができます。
広範囲にレーザー照射を行う”汎網膜光凝固”糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などが適応
A困難だった“黄斑への照射”:マイクロパルス閾値下レーザーを使って
レーザーの出力を細かく制御して、“マイクロパルス”というレーザーの出し方を用いる新しい治療方法ができます。
網膜に熱凝固(障害)を起こさない“低め”のエネルギー(=閾値下)を使って、今まで難しいといわれる黄斑への照射が可能となり、糖尿病黄斑浮腫や網膜静脈分枝閉塞症による黄斑浮腫に対するもう一つ*の有効な治療法となります。
*抗VEGF抗体を眼内へ注射することは、通常第一選択です
B緑内障への治療
“マイクロパルス“レーザーを使って隅角の線維柱帯を(凝固破壊せずに)照射することで、房水の流出が促進され、眼圧低下につながります。
緑内障の治療の基本は点眼薬ですが、眼圧不安定で点眼薬をそれ以上増やせないとき、眼圧下降のための緑内障手術を受けられないときには、この治療効果が期待されます。
<マイクロパルス閾値下レーザーとは?>
これまでの光凝固は、その名の通りレーザー光で網膜を凝固し、組織の変性や破壊を行うということの上に成り立つ治療法です。
最近、閾値下レーザーという概念が脚光を浴びます。組織破壊のない、もしくは網膜色素上皮(RPE)に破壊後に組織が再生されるぐらいのエネルギーでレーザーを照射する治療法が発展してきました。
マイクロパルスとは、設定した時間内にレーザーのON/OFFを交互に繰り返すレーザーの発振方法です。ONの時間をOFFの時間よりはるかに短くすることで、レーザーによる温度の上昇がRPEに限ることができます。
この性質を利用して、マイクロパルス閾値下レーザーは、RPEに照射して黄斑浮腫を減らす治療が可能になりました。